ダリオ・ブランドー × ディオ・ブランドー

「ディオ!紳士として、君の実の父ブランドー氏の名誉にかけて誓ってくれ!自分の潔白をッ!自分の父親に誓えるなら、ぼくはこの薬を盆の上に戻し、2度とこの話はしない!ディオ!さあ!誓ってくれッ!」
「ち…誓いか………ぐぐぐ…」
 おれは窮して天を仰いだ。
 体の奥底から這いずりあがってくる、毒虫のようにおぞましいあの記憶ッ!…髪が逆立ち、身震いが止まらないッ!

 震える指先をジョジョに叩きつけ、おれは叫んだ。
「い…いや!おれの前であいつの話はするな…あいつの名誉に誓うだと?かんちがいするなッ!あんなクズに名誉などあるものかァ―――ッ!!」
「君への疑惑が確信に変わったぞッ!ディオ!君の動揺と憎悪は普通じゃない!君と実の父親の間に何があったのかは知らんが…君は父親を殺害しているッ!」

 ―――……。

 母が死んだのは…おれが12歳になったばかりの冬だった。
 あの…金にも女にもだらしない酒乱のクズ野郎が、さんざ苦労をかけたせいで、母は体を壊し…若死にした。
 あいつは死に目にすら立ち会うことなく、おれは一人で母を看取った。

 …このおれも……。
 母のことだけは…愛していた。
 あのクズが泥酔して母に暴力を振るうたび、おれは血ヘドを吐きながら母を庇ったし…あのクズの作った借金返済の無理がたたって母が倒れてからというものは、薬代を手に入れるためならば 、何でもやってのけた。
 …賭け事だろうが、盗みだろうが……必要とあらば…体も売った。

 おれは人目にたつ容姿をしていたから、あらゆる悪と背徳のはびこるオウガーストリートで突っ立っていれば、ウンザリするほど客は寄ってきた。
 金貨と引き換えに、凶悪な少年嗜好者どもの欲望のはけ口に身を貶し、好き放題に肢体を嬲られるのは、耐え難い屈辱だったが…それでも母の命を救えると思えば、歯を食いしばり我慢できた。

 おれのこのブロンドの髪も、この顔立ちも…すべて母から譲り受けたものだ。
 毛深いくせに禿げ上がり、醜く脂ぎった、あのゴミのような父親からは…何一つとして受けついでなどいない!
 にもかかわらず…おれのこの体の中にはッ!
 ……事実としてッ!あのクズの忌まわしい血が、半分流れているッ!
 くそッ…それを思うだけで気が狂いそうになる!あいつは万死に値する!

 おれが仮に母を憎むとすれば…それは唯一ッ!
 あのクズといっしょになったことだッ!

 それから、あのクズが病床につくまでの約1年間…地獄がやってきた。
 記憶から削りたくても、削りとることができない…あれはまだ、母の埋葬が済んで三日も経っていない嵐の晩のことだった。
「ディオ!…聞こえねえのかァディオ!」
 乏しいランプの灯りの下で、本を読んでいたおれのところに、あのクズは酒瓶を抱えて乱入してきた。

(とうとう…母さんの葬式にも顔を出さなかったなッ!このクズがッ!)
 おれは眉をしかめて本を閉じ、イスを立った。
「とうさん、母さんが死んでまもないんだ…せめて…酒だけはやめなよ……」
「バッキャロ――ッ!!」
 罵声とともにあいつの赤黒い拳が、おれの頬げたに容赦なくブチこまれ、おれはイスごと壁まで吹っ飛んだ。

「ディオ!てめ〜ッ父親であるオレに意見できるほど、い―つからエラくなったァ〜〜〜ッ!!」
「母さんを死なせておいて、なんとも思わないのかい……とうさ…」 
 全部言わぬうちに、酒瓶が目の前に投げつけられ、顔のスレスレで砕け散った。
「だったらディオ!…てめ〜があの女の代わりをしろってんだよォ――ッ!マヌケがァ〜〜〜〜ッ!!」

 あのクズはドアでもブチ破るようにおれを床に蹴り倒すと、おれの上にのしかかり、毛深いその両手で 、野獣のごとくおれのシャツを引き裂いた。
「死んじまった女に用はねェぜッ!あいつが長患いしてたせいで、タマッちまってよォ〜〜ッ!ディオ…おめえは、あいつ以上にキレイな顔してるから なァァ!!じゅうぶん女の代わりが務まるぜェ〜〜ッ!!ウへへへへへへへへへ」

 酒臭い息を吐き散らしながら、あのクズはズボンをズリおろし、おれの顔面に突き出した。
「ケケケ!こいつをしゃぶって早いとこイかせろォーッ今すぐだァ」
「ぐ…むぐうェッ…!!」
 必死で唇を引き結ぶおれの口の中に、あいつはニタニタ笑いながら生臭い肉棒をねじり込んだッ!
 本当にッ…最低の父親だったッ!

「おげェ!?――ッ」
 怒りにまかせて噛みちぎろうとした瞬間、あいつはしゃがれた叫び声をあげて慌てて汚物を引き抜き、間髪入れずおれの頬げたを殴りつけた。
「ディオ!てめ〜逆らいやがったなァッ!…実の息子だから、本番だけは許してやろうと思ってたのによォ〜〜」
「ごふッ…」
 血を吐き、床に倒れ臥したおれの体の上に、白い布キレが乱暴に投げつけられた。
「おいディオッ…!とっとこれでもかぶりやがれィーッ!あの女の代わりに犯してやる!」
「うっ……!こ…これは母さんのドレスだッ!!」

 愕然としているおれをもう一度殴りつけ、床深くに押さえ込むと、あいつは舌舐めずりしながら 無理矢理脚の間に割り込み、何の躊躇もなくズップリと挿し貫いた。
 絶叫しながら振りかざした腕に、床に散らばったガラスの破片がグサリと突き刺さったが、ショックのあまり痛みも感じない!
「うあああああッ!やめろォッ!抜けェッ!!」
 押し入ってくるあいつの生暖かい肉棒の圧迫が、発狂しそうなほど気持ち悪くて…おれは胃液が喉まで逆流してくるのを感じた。

「てめ〜ディオッ…妙に色気のある目つきをしやがると思ったら…このおれに隠れて既に何本も男をくわえ込んでやがったんだなァ〜〜ッ!!おめえのココは、男を知ってる味がするぜェ〜ッ!」
 あいつは下卑た好色面をますます邪悪にゆがめ、おれの体を舐めまわし、貪り尽くした。
 身をよじればよじるほどに、この鬼畜の欲望はおれの中で淫虐にのたうち、執拗に深く侵入してくる。
 おれは絶望と憎悪の涙を流しながら、目の前のクズの顔面にツバを吐きかけた。
「ううッ…!この気違いめッ!それでも…父親かッ!」

「ケケケ!どうせおめえの体はもうとっくに汚れてんだしよォ…第一ディオ、おめえのこのイヤらしい体は、半分は父親のこのおれがこしらえたモンだ!何が悪いんだ!」
 あいつはゾッとするようなジャリジャリの胸毛を、おれのなめらかな白いハダに乱暴にこすりつけ、内臓が破れるかと思うほどに激しく蹂躙し続けた。
「うあ…う…うぐッ…!」
「ドヒャ―ッ!あの女以上に締めつけやがってよォォ〜〜ッ!こいつァたまらんぜェ〜〜」

 オウガーストリートで麻薬中毒者相手に身を任せたときですら、これほどの…身も心もズタズタに引き裂かれるほどの汚辱を味わいはしなかったッ!
「あの女ァ〜いい息子を残してくれたもんだぜェウワッハハハハ――ッ!」
「地……地獄へ落としてやるッ!」
 あいつは高笑いしながらおれの腰をつかみ寄せ、実の息子である12歳のおれの中に、なんのためらいもなく、獣欲まみれのおびただしい白濁液をブチまけたのだったッ!

 ――あのクズによる爛れきった陵辱行為は、1年後…おれが東洋の毒薬を手にするまで…昼夜問わず続けられた。
 実の息子を…己れの穢れた欲望の餌食にするなどッ!…あんな犬畜生にも劣るクズ野郎は…殺されて当然だッ!

 そして今ッ!
 …あの忌まわしい最低の父親の存在が、死してなお再び、このディオの足を引っ張っているッ!しかも…この正念場においてッ!
 だが…もう退くことはできないッ!!
 もうなにもない………全て失った…ジョジョの心さえもッ!

 こうなったらジョジョを殺してでもッ!
 あの汚泥にまみれた過去を葬り去り…輝かしい未来を…おれはつかむッ!!
 ジョジョが薬の証拠をつかむのに3日とみた!3日の間にジョジョをなんとか始末せねば!…殺すッ!